作文が苦手な子どもがつまずく理由と克服の第一歩
作文を書くのが苦手な子は少なくありません。多くの場合、「何を書けばいいかわからない」「文章をうまくまとめられない」と感じています。けれども、作文が苦手になるのには原因があり、それを知ることで、上達のきっかけをつかむことができます。
作文が苦手になる原因を知ろう
作文が苦手な理由の多くは、「正しい答えがない不安」にあります。算数や理科のように答えが決まっていないため、「これでいいのかな」と不安になり、手が止まってしまうのです。
もう一つの原因は、「書く経験の少なさ」です。普段から思ったことを文章にする機会が少ないと、いざ作文の時間になると何をどう書けばいいのかわからなくなります。
たとえば、「夏休みの思い出」をテーマにした作文を書く場合でも、「何を思い出せばいいか」「どこから書けばいいか」で迷う子が多いです。
まずは、作文を“正解探し”ではなく、“自分の気持ちや体験を伝える場”と考え直すことが、苦手克服の第一歩になります。
上手に書こうと思わなくて大丈夫
多くの子どもが「上手に書かなきゃ」と思うあまり、書き出しで止まってしまうことがあります。しかし作文に必要なのは、「上手さ」ではなく「伝える力」です。
最初はうまく書けなくてもかまいません。大切なのは、「自分が感じたこと」を正直に言葉にすることです。
たとえば、遠足で「お弁当がおいしかった」だけでも十分な題材になります。そこに「なぜおいしかったのか」「誰と食べたのか」「そのときどんな気持ちだったのか」を加えるだけで、立派な作文になります。
教師や保護者が「上手に書けたね」と褒めるよりも、「あなたの気持ちが伝わったよ」と伝える方が、子どもにとって大きな励みになります。
思ったことを言葉にする練習法
作文力を高めるためには、「話す」→「書く」の順番を意識すると効果的です。
たとえば次のような家庭での練習法があります。
- 今日一番楽しかったことを話す
- その理由を考える
- 紙に一文で書いてみる
このように、「言葉で整理してから書く」ことで、自然に表現力が育ちます。
また、日記やメモのように毎日数行でも書く習慣をつけると、言葉を文章にする抵抗感が減ります。
最初から完璧な作文を書こうとせず、「思ったことを言葉にする」小さな練習を積み重ねることが上達への近道です。
楽しく書ける!作文の基本構成と考え方
作文には自由な表現が求められますが、実は「書き方の型」を覚えるとぐっと楽になります。
ここでは、作文を書くときの基本構成や、子どもでもすぐ実践できる考え方を紹介します。
作文の構成をシンプルに理解しよう
作文は、「はじめ・なか・おわり」という三段構成を意識すると分かりやすくなります。
- はじめ:書くテーマやきっかけを紹介
- なか:体験したことや思ったことを詳しく書く
- おわり:全体をまとめ、自分の考えや気持ちを書く
この流れを守るだけで、読みやすく自然な文章が完成します。
小学生のうちは、「どんな順番で書くか」を意識するだけでも大きな成長につながります。
また、「起承転結」よりも「三段構成」の方が実践しやすく、作文の苦手な子にも向いています。
慣れてきたら、段落ごとに一つの場面を描くように意識すると、より生き生きとした作文になります。
起承転結と三段構成のちがい
「起承転結」は昔からよく使われる作文の型ですが、実は小学生には少し難しい部分があります。
なぜなら、「転(話の展開)」を自然に書くのが難しいためです。
一方で、「三段構成(はじめ・なか・おわり)」ならシンプルで、書く内容を整理しやすいというメリットがあります。
たとえば、次のように整理できます。
| 構成 | 内容の例 | 書き方のコツ |
|---|---|---|
| はじめ | 夏休みに家族で海に行ったことを書きたい | 読者にテーマが伝わるように書く |
| なか | 海で遊んだ体験や感じたこと | 五感を使って詳しく書く |
| おわり | 家族との思い出をまとめる | 感想や気づきを添える |
こうした表を使うと、子どもも作文の流れを目で見て理解しやすくなります。
作文の締め方については、以下の記事をご覧ください。
読み手を意識した「伝わる作文」づくり
作文の目的は、「読む人に伝えること」です。
自分だけがわかる内容ではなく、「読んだ人が情景を思い浮かべられる」ように書くことが大切です。
たとえば「楽しかった」だけでは、読む人には何が楽しかったのかわかりません。
そこに「海で波が足に当たってくすぐったかった」など、具体的な描写を加えることで、ぐっと伝わりやすくなります。
また、「誰に読んでもらいたいか」を意識して書くと、自然に言葉の選び方も変わります。
お友達に話すようなやさしい言葉で書くことで、読みやすく温かい作文になります。
題材の選び方とアイデアの広げ方
作文を書くときに多くの子どもがつまずくのが、「何を書けばいいかわからない」という段階です。
しかし、題材は特別な体験でなくてもかまいません。ここでは、日常の中から題材を見つけ、発想を広げる方法を紹介します。
身近なことから題材を見つけるコツ
作文の題材は、「自分の身の回り」にたくさんあります。
たとえば、こんなテーマも立派な題材です。
- 初めて自分で作ったおにぎり
- 学校で友達と協力したこと
- ペットの世話をした体験
- 苦手だった科目が少しわかるようになった日
大切なのは、「自分にとって印象に残ったこと」を選ぶことです。
他人にとって特別でなくても、自分の感情が動いた瞬間こそが、作文の材料になります。
作文の書き方ステップ実践編
作文を実際に書くときは、いきなり原稿用紙に向かうよりも、考える→書く→直すというステップを意識するとスムーズです。
この章では、実践的な書き方の手順とポイントを紹介します。
下書きで「書く前に考える」習慣をつける
作文を書くときに最初に大切なのは、いきなり書かずに**「何を書くか考える時間を取る」**ことです。
これはプロの作家も行う基本のステップです。
子どもが作文に取りかかるときは、以下のような流れを意識すると良いでしょう。
- 書きたいことを箇条書きにする
- その中から一番伝えたいことを選ぶ
- 起・承・転・結、または三段構成で順番を整理する
たとえば「運動会」という題材なら、
①種目の名前 → ②練習で苦労したこと → ③本番の感想 → ④応援してくれた家族への気持ち、
といった順番で整理できます。
このように「書く前に考える」ことで、内容がまとまり、文章に一貫性が生まれます。
最初に下書き用のノートを使う習慣をつけると、作文の完成度がぐっと上がります。
語彙を増やして表現を豊かにする方法
作文をより魅力的にするためには、語彙の幅を広げることが重要です。
とはいえ、難しい言葉を使う必要はありません。
大切なのは、「同じ意味でも違う言い方を知っていること」です。
たとえば「うれしい」という言葉でも、
「楽しい」「心がはずむ」「わくわくした」「にっこりした」など、さまざまな表現があります。
家庭では、日常会話の中で「今の気持ちを他の言葉で言い換えるとどうなるかな?」と親子で話してみるのがおすすめです。
また、好きな本やマンガを読んで「この表現いいな」と思ったら、語彙ノートに書き留めておくと、自然に表現力が身につきます。
書いたあとに読み返す重要性
作文を書き終えたら、必ず自分で読み返すようにしましょう。
このとき、間違い探しをするのではなく、「伝わるかな?」という視点で読むことが大切です。
チェックポイントの例:
- 主語と述語が対応しているか
- 同じ言葉を繰り返していないか
- 感情や考えがはっきり伝わるか
また、保護者が読むときは間違いを指摘するよりも、「この部分がよく伝わったよ」と良い点を伝えるのがおすすめです。
作文は直し方次第でどんどん成長する教科です。最初から完璧を目指すより、書いて直す流れを習慣化しましょう。
作文を上達させる練習法とサポート方法
作文の力は、一度に伸びるものではありません。
しかし、正しい練習を積み重ねれば、確実に書く力が育ちます。
ここでは、家庭でできる実践的な練習法と、保護者のサポート方法を紹介します。
毎日の短文練習で自然に力をつける
作文の上達には「毎日少しずつ書く」ことが効果的です。
日記のように長く書かなくても、1日3行でも十分です。
例えば以下のような形です。
- 今日一番うれしかったこと
- 今日がんばったこと
- 明日やってみたいこと
この3つを毎日書くだけで、文章を組み立てる力が自然に身につきます。
「短く書く練習」を続けることで、自分の考えを整理する力が育ちます。
親子でできる「話す→書く」トレーニング
作文は「書く力」だけでなく、「話す力」も関係しています。
家庭では、親子で会話を通じて文章力を育てることができます。
たとえば夕食の時間に、「今日学校で一番楽しかったことを3つ教えて」と聞いてみましょう。
そのあとで「どれを一番書きたい?」と選ばせると、子どもは自然と作文の題材を見つけられます。
このように、話すことを通じて思考を整理し、書く段階でスムーズに表現できるようになります。
話す→考える→書くの流れを意識すると、作文への苦手意識がぐっと減ります。
上達を実感できるチェックポイント
子どもが「上手になってきた」と感じられる瞬間を作ることが、継続のカギです。
次のようなチェックリストを使うと、成長を視覚的に確認できます。
| チェック項目 | できた日 | コメント |
|---|---|---|
| 最後まで書けた | ○月○日 | |
| 気持ちを書けた | ○月○日 | |
| 読みやすい文になった | ○月○日 | |
| 新しい言葉を使えた | ○月○日 |
このような記録を親子でつけていくと、成長の実感が得られ、学習のモチベーションが高まります。
教科書では教えてくれない作文の工夫
作文をもっと楽しく、読み手に伝わるものにするためには、少しの工夫が必要です。
ここでは、教科書ではあまり教えてくれない、でもとても大切な「表現の工夫」を紹介します。
読む人が笑顔になる「伝わる文章」
作文は「正しい文」を書くことよりも、「読んで気持ちが伝わるか」が大切です。
たとえば、「楽しかった」だけで終わるのではなく、「友だちと声を出して笑った」と書くと情景が浮かびます。
読む人の心に映像が浮かぶ文章こそ、伝わる作文です。
学校や塾での添削でも、「説明ではなく描写を意識してみよう」と言われるのはこのためです。
比喩・例えを使った表現の工夫
作文を印象的にするためのテクニックのひとつが「比喩表現」です。
たとえば、「風が気持ちよかった」ではなく、「風がほっぺたをなでた」と書くと、読んだ人の頭に情景が浮かびます。
日常生活の中で「〇〇みたいだね」と言い換える練習をしてみましょう。
こうした言い換えを習慣にすることで、作文の中に自然な比喩が生まれ、読む人に印象を残す文章になります。
作文コンクールで評価される書き方のポイント
作文コンクールで高く評価される作文には共通点があります。
それは、「自分の体験が自分の言葉で語られている」ことです。
難しい表現や立派な言葉を使う必要はありません。
むしろ、素直な気持ちやリアルな体験を具体的に書いた作文のほうが、読む人の心を動かします。
また、最後のまとめでは「自分が感じたこと」「これからどうしたいか」を書くと、印象がぐっとよくなります。
作文コンクールでの受賞作を見ると、子どもの等身大の視点が光っていることが多いのです。
まとめ:作文は“伝える力”を育てる最高の学び
作文は、ただ文章を書く練習ではありません。
自分の考えや気持ちを整理し、人に伝えるための大切な力を育てる教科です。
家庭でも少しの工夫で、子どもが作文を好きになるきっかけを作ることができます。
- まずは身近なことを題材にする
- 「上手に書こう」ではなく「気持ちを伝えよう」と意識する
- 短くても毎日書く習慣をつける
これらを意識するだけで、作文はもっと楽しく、もっと自由になります。
教科書では学べない「自分らしさ」を文章で表現できるようになれば、学びそのものがぐっと深まるでしょう。